NHKのドラマ『一橋桐子の犯罪日記』が10月8日の午後10時にスタートしました。
原作を書いたのは原田ひ香さん。
『三千円の使いかた』『彼女の家計簿』など、何かとお金にまつわるストーリーの著作が多い小説家です。
私は、前述した3冊をすべて読みましたがとても読みやすく、読み終わったあとで前向きな気持ちになれる本でした。
今回ドラマ化された『一橋桐子の犯罪日記』ですが、1話目を観終わってまず感じたのは、原作とドラマの設定と内容がかなり違う!
ということでした。
それでは、原作とドラマの相違点を考察していきます。
桐子の仕事と性格
桐子はパチンコ店で清掃の仕事をしています。
知子は、料理、編み物、俳句、人付き合い、なんでも得意な人でしたが、桐子の取柄と言えば、きれい好きなことくらいです。
原作版
桐子は池袋の雑居ビル清掃の仕事をしています。
知子と暮らしていたときは、料理が好きな桐子が食事作り担当、きれい好きで手先の器用な知子が掃除と洗濯とお裁縫担当でした。
桐子の仕事は、ドラマも原作も清掃ですが、ドラマはパチンコ店、原作は雑居ビルとなっています。どちらも清掃だし、原作でも、途中からインフルエンザのおじいさんの代わりにパチンコ店で清掃の仕事をするようになるので、そんなに大きな違いは感じません。
桐子と知子の関係性
ドラマ版
知子と桐子は、「俳句の会」で知り合います。一緒に住んだ期間が3年間で、その前から友人関係にあったとしても、数年程度の付き合いだったと推測されます。
桐子が詠んだ俳句を知子が素晴らしいと褒めて、それから仲良くなりました。
原作版
桐子と知子は高校時代からの古い友人関係です。桐子はずっと独身で、知子はモラハラ夫を最期まで看取りましたが、お互いに歳を重ねる中でも、ずっと友人関係は続いていたようです。
この設定の違いには驚きました。
高校時代から続く友人関係と、歳をとってから数年のお付き合いでは、相手に対する思い入れが全く違うのではと思ったからです。
こちらのドラマは、連続ドラマとしては短い全5話です。
高校時代から半世紀以上の友情を描くには、全5話では描き切れないということなのかもしれません。
久遠 樹の職業
ドラマ版
桐子が清掃の仕事をしているパチンコ店の上司です。
桐子よりもかなり年下ですが、桐子に対しても年齢関係なく厳しく接します。
刑務所に服役していたという噂があります。
原作版
桐子が清掃で出入りしている、お洒落な内装の雑居ビルで働いている青年。
喫煙室を掃除するために桐子が入ると、必ず煙草の火を消す優しい性格です。
本人は「彼女なんかいません」と話すが、桐子は魅力的な青年だと思っている。
桐子は、ブラック企業で働かされているかわいそうな青年だと思っていたが、実は、雑居ビルの所有者であり会社の経営者だった。
久遠 樹の設定は、性格、仕事、風貌と、すべてが原作と違います。
ですが、まだ1話目ということもあり、久遠の隠された素性が明らかに…なんて展開ももしかしたらあるかもしれません。
榎本雪菜との出会いの場面
ドラマ版
桐子が、刑務所へ入るためにイチゴ大福を万引きしたスーパーでアルバイトをしていた女子高生。
イチゴ大福を手提げに入れたまま、お店を出た桐子に雪菜が声をかけます。
万引きを咎めたときもそうですが、そのあと偶然コピー機でお金を印刷しようとす桐子を見つけたときにも、桐子に対してズバッと説教をします。
原作版
イチゴ大福の万引きをしたものの、人情派の万引きGメンの温情によって叱責だけで済み、次に桐子はコンビニのコピー機で偽札を印刷しようとする。
そのコンビニでアルバイトしていた女子高生の雪菜に、桐子の行為を見咎められる。
雪菜は「コピー機でお金を印刷しても使えないんだよ、おばあちゃん」と桐子に優しく諭す。
桐子と榎本雪菜の出会いの場面が、桐子が挑戦する(刑務所に入るための)犯罪の一つ目に前倒しされたために、原作では登場したおばちゃん万引きGメンが、ドラマ版には登場しません。
しかも、原作の雪菜は桐子に優しいですが、ドラマ版の雪菜は桐子にかなり厳しいことも言います。
ドラマ版雪菜役の長澤 樹さんは、妙に日焼けして汚い茶髪ですが、なぜこんな風貌にしたのか?
女子高生の役だし、原作ではもっと凛とした頭の良い娘さん風を想像していたので、長澤 樹さんの元々の姿で良かったのでは?と思いました。
不動産屋の相田
ドラマ版
不動産屋の営業で、桐子と知子に住むところを紹介する。
家に大事な来客があることを忘れていた桐子に、「一橋さん、遅いですよ、なにやってたんですか~」と言ったり、刑務所に入りたくて万引きをした高齢男性のニュースを観ている桐子に、「紹介できればいいんですけどね、刑務所」と言ったり、配慮がない発言が多い。
原作版
知子が死んだ後、家賃が払えなくなってしまった桐子に対して、「これは言いにくいことなのですが」と言葉を選びながら話をするなど、どちらかというと桐子に親身に接する。
車で桐子を自宅まで送ってくれるなど、高齢の桐子を気遣うこともある。
原作では、ビジネス上の付き合いの中にも、高齢の桐子を気遣う言動が見られます。
ドラマ版の相田準一は、どちらかといえば軽い雰囲気の不動産の営業マンで、特に桐子に同情してる様子はありません。
これも、わざとそういう演出にしたのか、それとも演じているハマカーンの神田伸一郎の持つ雰囲気のせいなのか…
世の中、困窮する高齢者に優しい人ばかりではないというリアルな演出なのかもしれませんね。
斎藤薫子が美人すぎる
ドラマ版
桐子と知子が参加していた「俳句の会」の友人、三笠隆のフィアンセ。
年齢は40代前半くらいで、清楚風の美人。
隆と薫子は婚活パーティーで知り合った。
原作版
三笠隆のフィアンセ。
隆が通い始めた整骨院でアルバイトをしていて知り合ったそう。
年齢は59歳で、髪を茶色に染めて格好も若作りしているが、中年太りで十分にその年齢に見える女性。
買い物が入ったスーパーの袋を、どん!とテーブルに置くなど、若干下品なタイプ。
タイトルにも書いてますが、とにかく斎藤薫子が美人過ぎますって。
しかも若すぎる。
独り者のおじいさんを骨抜きにしちゃう女性のタイプは、あまり美人ではないと相場は決まっているではありませんか。
ですが、この木村多江という女優。カメレオンのように自在に変わる演技力で、この斎藤薫子という癖のある役をどう演じてくれるのか期待度大です。
知子の娘
ドラマ版
横柄な態度の夫に、困った顔をしながらも仕方なく従っている様子の妻。
桐子に対して、何か言いたいことがありそうだが、夫の手前言い出せずにいる。
原作版
原作版では、知子には娘はなく、官僚の長男と大手鉄道会社に勤める次男がいる。
息子たちは、母である知子に対して罪悪感のような感情があり、そのせいで桐子に対しても複雑な思いを持っている。
息子のお嫁さんたちは、姑である知子の気持ちも、知子を失った桐子の悲しみも理解している。
知子の子どもは、原作で息子、ドラマでは娘と、性別から違います。
1話目を観ただけでは、知子がモラハラ夫に苦しめられていたかどうかはわかりませんが、娘の奈穂美(戸田菜穂)の夫はそのタイプです。
母と娘がどちらも同じ苦しみを抱えていたという展開になるのなら、この設定の違いにも納得できます。
まとめ
松坂慶子主演のNHKドラマ『一橋桐子の犯罪日記』
ドラマ版と原作版の違いについて、比較と考察をまとめました。
ドラマと原作で、多数の設定の違いを知っていただけたのではないでしょうか。
小説や漫画の原作がドラマ化されることは少なくないですが、登場人物の設定はもちろん、展開やセリフもまったく同じということが多いと思います。
第一話を観て、登場人物の設定や、細かいストーリーがかなり違うことに驚きました。
ですが、暗くなりがちなテーマを明るくポジティブに描いているあたりは、原作者の作品への意図をリスペクトしていると感じました。
ドラマを観れば前向きな気もちになれることは間違いないと思いますので、ぜひ、最後までご覧になってください。
では、最後まで読んでいただきありがとうございました。
『一橋桐子の犯罪日記』は、こちらで観ることができます。
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